2010年9月アーカイブ

2010年9月29日

医療

必要医師数は1.14倍増でいいのでしょうか?

 勤務医1.18万人不足 地域・診療科に偏り 厚労省調査(朝日)


医師2万4千人「不足」、厚労省 初の全国調査、深刻な実態(共同)

全国の医療機関で実際に働く医師数が計約167千人なのに対し、医療機関側はさらに計約24千人が必要と考えていることが28日、厚生労働省が初めて行った「必要医師数実態調査」で分かった。現在の1.14倍の人数が必要で、医師不足の深刻な実態があらためて浮き彫りになった。


これは今日流れたニュースです。これを見て、医師間でいろいろな意見が飛び交いました。

厚労省のホームページには、「病院等における必要医師数実態調査の概要」という本日付の報告書が載っています。


しかしちょっと待ってください。日本の医師数は人口1,000人当たり2.1人と、先進国(OECD30カ国)平均の3.1人の2/3です。ということは、OECD平均に追いつくには1.5倍の医師が必要なはずです。それがなぜ、1.14倍という数字になってしまうのでしょうか?


上記報告書で厚労省は最初に、「・・・厚生労働省が実施した調査としては初めてのものである。なお、本調査の結果は、医療機関から提出された人数をそのまま集計したものである」と述べています。この「医療機関から提出された人数をそのまま集計したもの」がくせ者です。私の病院でもそうでしたが、このアンケートに答える前提は、今の医師の働き方を前提にしてあと何人必要か、です。


しかし「労働基準法違反」が常態化している医療現場を変えるには、抜本的な医師増が必要です。新たに医師免許を取得する医師の1/3は女性医師です。これから子どもを生み育てる人たちが、そんな労働を続けられるとは思えません。またこれからは、男性医師だからそういう労働に耐えられるはず、という時代でもありません。医師労働も、いや人の命をあずかる緊張を強いられる仕事であるからこそ、8時間労働が当たり前の環境を目指すことが必要です。


しかもこれからの日本はかつて経験してことのない高齢社会を迎えます。病気の人が増えるわけです。これらを考慮すると、1.14倍ではとても足りないと思います。


医学部定員を1.5倍にしても、卒業し一人前になるまで少なくとも10数年必要です。それを考えると、定員を増やしつつ、今働く医師にできるだけ負担のかからない環境を整え、いわゆる「地域偏在」を是正し、定年を迎える医師にも無理のない範囲で仕事をしてもらい、・・・。

やるべきことはたくさんあります。少なくとも、今回の調査で医師増員を1.14倍に「値切る」ようなことのないようにしてほしいと思います。

2010年9月20日

院長日記

丹後100kmマラソン完走しました

2010年9月15日

医療

地域医療支援センター

 8月の話になりますが、厚生労働省は医師不足に悩む病院に医師を派遣する「地域医療支援センター」(仮称)を各都道府県に設置する構想をまとめた、と報道されています。


 特別枠での要望なので、どうなるかは分からないのですが、医師不足・医療崩壊に対する方法として注目したいと思います。


 具体化にあたり、最近の医療界の情報誌に興味深い記事が載っていました。


週刊医学界新聞

へき地で学ぶ、へき地を支える<前編>研修医を受け入れる


 愛知県へき地医療対策協議会で・・・僻地医療研修については,・・・定員オーバーで応募人数の7割程度にまで絞り込む必要がありました。

 なぜ定員を上回る希望者が出るのでしょうか。僻地のほうが指導医とマンツーマンで濃密な教育が受けられ,人数が少ないために貴重なマンパワーとして責任ある仕事に臨めることにやりがいを感じられるからです。

 地域で研修医を育てるプログラムが成功した要因は,大きく分けて3つあります。まずは研修医を指導できる人材がいることです(指導医の存在)。

・・・

 次にアイデアです。私たちは各地で実践されている地域医療での研修事例を分析し,愛知県の地理的,経済的,地域などの特性に合ったエッセンスを取り出してプログラムに反映させました(地域を活かす)。

・・・

 最後は自治体、特に地域医療は市町村をまたいだ問題なので,都道府県が積極的に関与する必要があります。・・・医療側がいくら提言しても,実際に制度を管理するのは行政ですから。指導力のある人材をそろえるとともに,行政に働きかけることも重要です(都道府県の役割)。

 以上の3点のうち,1つでも欠けていれば愛知県のへき地医療支援機構の事業はスタートすることすら困難だったかもしれません。


MT Pro

地域医療充実のための臨床研修改革に取り組んで


「奈良県臨床研修ワーキンググループ(WG)」・・・

 県の武末文男医療政策部長にもコアメンバーに加わっていただき,実際の臨床研修に現場でかかわっている立場と,地域医療を統括する行政の立場から十分に意見交換できるようにしました。・・・

 奈良県は医療改革に着手しており,臨床研修WGは○○部長のご尽力もあり,行政と良好に協調しながら活動を進めています。・・・

 各病院はもはや自院のフルマッチだけでなく,奈良県全体のフルマッチを意識して動いていただけるようになりました。・・・

 地域医療の維持という観点から臨床研修をとらえるとともに,地域全体で医師を育てていく環境を構築したいと考えています。


 上記の記事から言えることは、1)指導医の存在、2)地域を活かす、3)行政とりわけ都道府県の役割が大切、ということです。

 予算をつけることは大前提としても、医師不足・医療崩壊問題に対する対策が成功するかどうかは、都道府県が本気になってやるかが決定的だと痛感しました。

 京都府にも医療対策協議会がありますが、上記3点を意識して地域医療をどうするか、医師養成をどうするか、まともに論議した形跡はありません。

2010年9月11日

院長日記

京都革新懇

京都革新懇第4回交流集会へ参加してきました。


地域、青年などの分野からの報告をもとに、パネルディスカッションが行われ、私もパネラーとして参加しました。


私は知事選挙で感じた、1)都市部と地方の差、2)公(おおやけ)の役割の重要性、3)民医連の活動を報告しました。


1)都市部では貧困問題などがあるが、地方では役場、農協、学校の統廃合、農林漁業の衰退で人が住めなくなっている。一方で、都市部は地方の農林漁業がライフライン。必ずやってくる食糧危機、木材危機を考えると、都市部と地方の共生が大切。

2)昨年新型インフルエンザがやってきたとき、京都市立病院が発熱外来へすべての患者を送って構わない、と医師会メーリングリストで流していただいたことが救いだった。これで風評被害にあい、市立病院は1億円の減収になったが、民間病院であればそれに耐えられない。1億円の補填は税金の使い道としてまっとうだ。今後本格的な強毒性のインフルエンザがやってきたとき、京都府は発熱外来を増やす方針らしいが、可能なのか? 予想される医療機関の被害に対する補償をどうするつもりであろうか? いざとなれば民間病院も医療という公的な仕事をしているわけなので取り組む覚悟があるが、つぶれるわけにはいかない。

3)知事選挙で、民医連への医療活動への確信、職員の成長、医療機能評価で再認定、経営改善とすべて進んだ。相乗効果があった。


民医連では、秋の運動として地域の方々と、「後期高齢者医療制度廃止」、「国民健康保険を守る」、「消費税なしで財源はできる」の取り組みを行います。私なりの解釈では、これらに共通する精神は、将来不安をなくすということです。

将来不安をなくすことと、格差縮小、労働者の賃金保証が内需拡大、日本経済回復の最大のカギだと思います。


予定されていた小池晃氏が急遽来られなくなり、緒方靖夫氏が講演。外国語が堪能なだけあって、イスラム問題で聴衆をつかみ、中南米で起こっている選挙を通じた政権交代の話へと進む。新自由主義、アメリカからの自立。


世界の流れは、「国連憲章の原則を守れ」、「異なる価値観を認める」、「盟主を求めず自主性を重んじる」こと。


欧州から見た日本は「元気がない」。アジアといえば、韓国、中国、インドらしい。


欧州の社会保障は、運動で勝ち取ったものであり、うらやましがるだけではダメ。その後、日立で一回残業を断っただけで解雇された人の話へ進んだ。最高裁で敗訴したが、国際的に問題にすることで、解決をした。「理不尽には、運動を続けることで取り組むことが大切」とのまとめは、極めて納得できるものでした。


夜の他の勉強会を含めて、今日は過去最大の22回のツイートを行いました。

http://twitter.com/yusukemonkyoto

2010年9月 5日

院長日記

競争よりプロ意識

私の同級生で、アメリカで活躍している医師がいます。その医師が、ある紙面に興味深いことを書いています。


アメリカでは「医療にも市場原理を導入せよ」という主張が強力です。「手術死亡率を公表する→手術を受ける際、患者は死亡率が少ない病院を選ぶようになる→患者が減ると困るので死亡率の高い病院は死亡率を下げる努力をする→どこの病院も死亡率が下がるので、国(あるいは地域)全体の死亡率が下がる」


しかし、死亡率を下げるための一番手っ取り早い方法は、重症患者あるいは(重い糖尿病などの合併症を持つ)難しい患者を避けることです。成績を上げるために患者を選り好みする」という悪しき行為が蔓延する危険があるわけです。


それに対し、手術成績を上げるために互いに知恵を絞り合うことを試みたところ25%の死亡率減少効果がみられたとのことです。病院を巡回してそれぞれの手術を見学。術式の細かな違いに始まって、術前準備や補助療法の相違まで「なぜ君の病院ではそんなことをしているのか?」と、ざっくばらんに意見を交換しあった後、よいと思われることすべてを全病院で取り入れた成果が25%の死亡率減少だったわけです。


競争ではなく協力し合うことで地域全体の医療の質を高めることを示しているわけですが、これはアメリカだけの話ではありません。私の勤務する京都市左京区でも、頻繁に勉強会や情報交換を行っています。それが結果として各医療機関、介護事業所のレベルアップ、そして地域全体のレベルアップに繋がっているのです。それがプロというものだと思います。


もっともなお「成果主義」が蔓延しているのがアメリカなのですが、さて日本はどこへ向かうべきなのでしょうか?

1
« 2010年8月 | ブログトップページ | アーカイブ | 2010年10月 »