2010年12月アーカイブ

2010年12月23日

院長日記

国がすすめる「地域包括ケア」について考える

「国がすすめる『地域包括ケア』について考えるシンポジウム」、当直明けではありましたが、眠くなることなく興味深く聞いてきました。

国の考え方は、「『地域包括ケア研究会報告書』の公表について」「介護保険制度の見直しに関する意見」にあらわれています

主催者である京都保険医協会によるプレゼンテーション「国がすすめる『地域包括ケア』について考える」。岡崎祐司佛教大学教授の基調講演「高齢者のケアと地域生活保障」。

「おおむね30分以内の日常生活圏において、医療・介護のみならず、福祉・生活支援サービス等が一体かつ適切に相談利用できる提供体制」の考え方は肯定しつつ、財政問題を出発点にしていること、介護保険は市場万能論でケアの原則がゆがめられていること、公(おおやけ)の役割が後退していることを指摘し、マクロ的には「新自由主義から新福祉国家へ」の道が必要であることが強調されました。これは社会保障憲章・社会保障基本法につながるものです。

シンポジウムでは、「認知症の人と家族の会」が、要介護認定の廃止等の提言、心のケアの重要性を指摘。開業医の立場から、介護保険の限界、医療現場の赤裸々な報告。区社会福祉協議会から今の取り組み状況と地域差の報告。自治体ケースワーカーは、介護保険前後、2006年地域包括支援センター前後で、いかに行政の役割が後退したか、今後の求められる役割について指摘。地域包括支援センターから、求められる地域支援と介護ケアマネジメントに忙殺される現実について報告。

フロアーから、特別養護老人ホームの今後(施設の重要性、ここにも市場原理がきている現状)、京都新聞「ひとりじゃないよ」連載について指定発言。

残り時間数分のところで、2人のフロアー発言。共通していたのは、考え方・理念と現実のギャップ。地域包括ケアは具体的に誰がやるのか? 行政をどう引っ張り出すのか? 介護保険利用者は今適切なサービスが受けられないことを切々と訴えていました。国・行政の責任を追求しつつ、どうしたらいいのか、何とかしてほしいという思いが伝わってきました。

時間切れでシンポジウムのまとめは、原理を変えないと公の責任は引き出せないというものでした。確かに介護保険が社会保障・福祉のあり方を大きくゆがめてきた(応益負担や現金給付)のは事実ですが、すでに定着しており現実から出発するしかないのではないか、と私は感じました。特に今は財源をどう確保するかが大きな問題になっており、現実、国民の意識、財源の絡み合いで物事は進みます。

要は力関係、と言ってしまえば身も蓋もありませんが・・・。現実を直視する中で改善点も見えてきますし、進む方向の目標として社会保障憲章・社会保障基本法のような理念がある、と複眼的に構えることが必要なのではないでしょうか?

また財源については、格差の大きな社会ほど絆(きずな)=「ご近所の底力」が損なわれるわけですから、応能負担がもっと強調されるべきだと思います。

最後に「地域包括ケア」についてですが、全国国民健康保険診療施設協議会(国診協)の「地域包括医療・ケア」「地域包括ケアシステム」の方が歴史があり、医療の役割を強調し、健康づくりまで視野を広げ実践しており、すぐれていると考えます。今年全国国保地域医療学会へ参加して特にそう感じました。

2010年12月18日

院長日記

「早川一光のばんさい人間」で話してきました

今日のKBSラジオ「早川一光のばんさい人間」で、朝7時半から8分間話してきました。今日は38人の聴衆がスタジオにおられ、和気あいあいとした雰囲気がただよっていました。

7時半の時間は「KBS京都アクセスクラブ」の提供するコーナーで、京都民医連(民主医療機関連合会)もこの「クラブ」の会員なので、今回民医連のことを話して下さい、という依頼でした。私は京都民医連が会員であることも知りませんでしたが・・・。

事前に打ち合わせはあるのですが、以前対談した時も打ち合わせと関係のない展開になったので、流れに任せることにして臨みました。しかし・・・、

意外と早川先生の突っ込みが少なく、ほぼシナリオに沿った話になりました。

民医連て何ですか?ー

医療機関にかかるのが難しかった時代、「自分たちの病院、診療所を作ろう」という運動が全国各地で起こり、そうした病院、診療所が集まって民医連という組織を作りました。京都民医連には、5病院、30診療所、多くの介護事業所などがあります。

ーどんなことを目指しているのですか?ー

無差別・平等の医療と福祉の実現です。自分たちも頑張るし、日本全体で実現できるよう制度の改善などの運動をしています。

ー具体的には?ー

無差別・平等の精神から、差額ベッド代はとっていません(会場からホ〜という声)。それと無料低額診療制度をしています。医療費を払うのが困難な低所得の人に、窓口負担を無料にしたり減額したりする制度です。

これは民医連だけでなく、いろいろな医療機関が京都府内でも実施していますので、お困りの方は是非問い合わせして下さい。

ー利用者は増えていますか?ー

構造改革が進められ、派遣労働自由化、非正規雇用の増加などで格差が拡大し、貧困という言葉があらためて注目されだした頃から増えています。

ー持ち出しだから経営を預かる身としては大変でしょう?(早川)ー

いや、本当に大変です(笑)

ー保険証を持たない人も増えているとか・・・ー

高すぎる国民健康保険料が納められないため、保険証を持てない人は窓口で全額負担しなければなりませんので、よっぽどでないと受診しません。保険証があっても3割負担なので受診しづらいのです。いよいよとなって受診したときには癌の末期で手遅れ、そんな事例をたくさん経験しました。

ーラジオを通じて伝えたいことは?ー

「社会保障は権利だ」ということです。ヨーロッパでは医療と大学卒業までの教育は基本は無料です。それを踏まえたうえで財源の話をすべきです。あらためて「お互いさま」と言う言葉の復権が必要だと思います。「金のある者は金を、力のある者は力を、知恵のある者は知恵を」ということで共同体は成り立ってきました。財源は金のある企業や高額所得者が負担し、大きな財源で社会保障を充実させることが必要です。

ーでも企業の税金は安くすることが決められて、困りますね(早川)ー

そう思います。

高齢社会に向けて、地域の力、「ご近所の底力」が求められますが、そうした力を持つ地域はどんなところかということが研究されてきました。結果は、格差の少ない地域ということになっています。そういう意味でも力のある企業やお金のある人が財源を負担して格差をなくすことが大切なのです。

ーホームレス支援もされるのですね?ー

12月26日(日)10時〜13時に九条診療所で、医療・生活相談、炊き出し、支援物資の配給などを行います。ご協力お願いいたします。


こんな感じだったと思います。

高校の同級生から、「民生委員1年生の時、ご高齢者の方々の気持ちを少しでも理解でき関り方の参考にしてくださいと早川先生のご本の紹介があり、回し読みしました。この番組、早朝からなのに何人もの民生委員さんが聞いてらっしゃるようでした」という情報をいただきました。

民生委員の方が聞いている、というのは初めて知ったのですが、早川ワールドで楽しみながら、そういう方々に役に立つ情報が一杯の番組だと感じました。

2010年12月10日

院長日記

リハビリテーション機能評価が終わりました

私の病院は、昨年11月に病院機能評価再受審を終えました

病院機能評価は日本の中でかなり位置づいており、本年115日付けで、日本にある8708病院中2550病院が認定されています。

認定病院は、さらに付加機能と言われる「救急医療機能」、「リハビリテーション機能」、「緩和ケア機能」を受審できます。今回私たちはリハビリテーション機能評価を受けたわけです。

こちらはまだ30数病院しか認定されておらず、京都で認定されている病院はありません。

私の病院はリハビリテーションに力を入れています。受審は「試験を受ける」ということではなく、第三者からの評価を受けることにより質を高めることが目的です。つまりリハビリテーションの質を高める目的で受審したわけです。

準備のための数ヶ月は、病院の中で受審目的の徹底、評価、問題点の抽出、改善の方策検討、実践、・・・を繰り返しました。特にこの数週間、数日は夜遅くまで関係者で議論し、どうするかを徹底してきました。間違いなく、受審のプロセスを通じて病院の改善を進めてきたと言えます。

率直に言って、病院機能評価について医療関係者の意見は二分されます。積極的に活かすべき、低医療費政策で疲弊している現場に負荷をかけるべきでない、の2つです。

これについての私の意見は同じく2つです。ギリギリ追い詰められている状況であれば別だがそうでなければ受けた方がいい、受審したことが活かせるかどうかはトップの姿勢による。

通るためだけの目的なら受けない方がいい。質の向上=改善が目的であることをトップが示し続け、そのための努力を惜しまないことが大切だと思います。

今回の受審で私の病院の課題が見えてきました。1回で認定されるかどうかは分かりませんが、今日の経験を通して明日から、数ヶ月後の正式な報告を受けて、さらに質の向上に努めたいと思います。

医療機関に対する期待が大きく、政権交代しても低医療費政策が続く時代だからこそ、多くの京都市民・府民、国民に、私たち医療者の心意気を示したいと思うのです。それが、多くの国民の共感を得て、医療費を増やす必要があることを理解してもらう道だと思います。

2010年12月 4日

院長日記

京都国民健康保険(国保)調査

今日124日と明日5日の2日間、国民健康保険(国保)実態調査が行われる。今日は伏見区醍醐、明日は伏見区向島。今日は100人以上の調査員が集まった。目標は5001,000件の調査。家庭訪問し実態調査をするが、私は今日の午前中の参加。

京商連会長あいさつが印象的だった。あの「はやぶさ」製造に関わった従業員20人の中小企業が資金繰で大変。地域の雇用を支えている中小企業がなくなれば地域経済は壊滅的になる。

30項目以上の長いアンケートに答えてくれるだろうか?」というのが私の不安だったが、それは杞憂だった。留守も多く、130分くらいかかるため、午前中に訪問できたのは2軒だけだったが、極めて印象的だった。

1人目は60歳台男性。糖尿病、高血圧など治療中。4人世帯で、30歳台の息子、娘がアルバイト生活のために、主な収入は本人の年金、年200万円以下。これで保険料は20万円を超える。滞納はないが、保険料安くならないか役所へ相談に行った。窓口負担3割もきつい。それはそうだろう。「交際費や遊興費は切り詰めていませんか?」の質問に「ありません」。よく聞くと、そもそも交際や遊興はしていないということ。正確な解釈は「切り詰めている(=そこにお金を使っていない)」だろう。

もう1人、80歳台の元気なおじいさんを訪れた。1人暮らし。後期高齢者医療保険。医療機関にはかかっていない。元警察官。そこそこの年金あり経済的には困っていない回答だったが、今回の訪問をひどく喜んでいた。話し相手がほしい。寂しい。これも1人暮らし高齢者の強い要求だろう。

調査をしなかった世帯(中心は社会保険家族)も、息子が国保なので保険料には強い関心を持っていた。相談窓口の案内は渡すことができた。

他の調査員の状況は分からないが、門真市の調査が国保問題を大きくクローズアップしたように、この調査が政治を動かし、調査に協力していただいた方々の個々の相談に乗り現状を改善することができれば大成功。

そんな思いを持ちながら、午後の予定地へ向かった。

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