医療

2010年7月31日

医療

府県境(さかい)の医療

3日間、京都府近くの奈良県にある私立病院を見学、懇談してきました。

患者は6割が奈良県、4割が京都府だそうです。周囲の医療機関とどのような連携をすべきか、奈良県だけでなく、京都府南部の唯一の公的総合病院である公立山城病院とも連携しているとのことでした。


公的病院と私立病院の役割分担、連携のあり方、とりわけ府県をまたがる役割分担は医師不足の日本において極めて重要な課題です。公的病院の役割は、不採算だが重要な政策医療、各医療圏における連携の要(かなめ)だと考えます。


歴史的な経過もあり、日本の病院の8割は私立病院。私の病院も私立病院ですが、私立と言えども公的な仕事をしているという自負があるのがあらゆる病院の思いでしょう。それだけに統廃合、民間委譲と大変な環境にある公的病院の存在意義が問われる時代だと思います。


公の役割は公の存在意義を分かりやすく市民、府民に示してこそ理解されます。今ほどそうした広報が求められる時代はありません。理解を得ながら、市民、府民を味方につけることが大切です。「官から民へ」は格差拡大の構造改革路線そのものだったわけで、その道を突き進むことは、官も民も不幸になります。


ところで、府県境をなくすのが道州制広域連合という声が聞こえてきそうですが、これは府県の共同で十分にできます。道州制、広域連合にしても、その境の連携をどうするかという問題は残るのですから。


2010年5月26日

医療

在宅専門クリニック

と言っても、ピンとこない方がおられると思いますが、京都でも少しずつ増えてきています。外来はほとんど行わず、在宅医療(訪問診療や往診)を中心に行っている診療所です。

鹿児島で行われた日本リハビリテーション医学会に参加した時に、面白い取り組みをしておられる「ナカノ在宅医療クリニック」の見学をしてきました。

中野医師は10年間で628名中210名を在宅で看取り、末期癌については146名中123名を看取っておられます(最近は末期癌は100%看取り)。「24時間対応ができない在宅医療や訪問看護ステーションは存在意義がない」という考えを持ち実践をしておられますが、訪問看護ステーションとの連携、ICTの活用とコメディカルスタッフとの共同で、楽にできていると言われます。

「キュアからケアへ」「今後は急性期病院の集約化と在宅医療の普及で医療は再生できる」と主張しておられる方でもあります。

私は、「病院医療は急性期病院だけでは成り立たず、回復期リハビリテーション病棟をはじめとする急性期後の入院医療はある」という立場ですが、在宅医療が今後の医療のあり方を変えるという点では、同じ考えであることを実感しました。一見ゆったりとした診療を行いながら、頻繁にかかる電話に対応し、ICTを利用して合理的に処理する姿は、大いに参考になりました。

中野氏が主催するメーリングリスト「在宅ケアネット鹿児島」は、医師、コメディカルスタッフだけでなく、研究者や一般市民の方も入っており、在宅医療だけでなく政治のあり方を含めて極めて刺激的な議論が交わされます。

いろいろな立場の方がおられますので、うなずけない意見もありますが、論点が多岐にわたり問題意識は広がります。関心のある方は参加されてはいかがでしょうか。
2010年5月18日

医療

積貞棟(せきていとう)と差額ベッド代

2010年2月13日

医療

医師・介護懇談会

2010年2月 8日

医療

「健康格差社会」を生き抜く

健康格差って何? こう思われる方も多いと思います。

構造改革路線により、格差の拡大、貧困の増加が問題になっています。「格差があって何が悪い」と言ったのが、小泉元首相です。


格差については、いろいろな考え方はあるでしょうが、タイトルの「健康格差社会を生き抜く(朝日新書)」は、所得格差が「健康格差」「いのちの格差」になっている事実を示し、そのことが許されることなのかを問うています。

 

著者の近藤克則医師は、私が東大でリハビリテーションを学んでいるときに一緒に勉強した医師です。今は日本福祉大学の教授になり、臨床医としても仕事をしながら、社会疫学の分野で日本のトップクラスの研究をしている、この分野では知らない人のいない研究者でもあります。氏は「健康格差社会ー何が心と健康を蝕むのか(医学書院)」、「検証『健康格差社会』ー介護予防に向けた社会疫学的大規模調査(医学書院)」などの学術書を書いていますが、この本は一般向けに、さらに新知見もまじえて書かれています。

 

ついでながら、「脳卒中リハビリテーション第2版 早期リハからケアマネジメントまで(医歯薬出版)」は、氏と一緒に私たち民医連の医師が編集した本で、今もよく売れています。私も編者の一人です。

 

「健康格差」についてインターネットで検索すると、山ほど情報が出てきます。WHOは1998年に「健康の社会的決定要因(Solid Facts)」という報告書を出し、2003年には第2版が出されています。例えば、「社会階層が低いほど(所得がすくないほど)、寿命が短く、病気は多い」


日本ではあまり言われていないのですが、ヨーロッパではこの1998年頃から、健康格差削減の目標を掲げ、健康政策、医療政策にとどまらず、労働政策、教育政策、公共交通のあり方、税制、所得保障などさまざまな評価や政策検討がなされています。


この本には、格差の大きな社会ほど絆(きずな)=「ご近所の底力」が損なわれることなども書かれています。つまり構造改革で格差を広げたことが、ご近所の底力を低下させたわけです。現知事は地域力や絆を強調されますが、構造改革で絆をつぶしながら、一方で絆を強調するのは「マッチポンプ」だと思うのです。


是非みなさんに読んでいただきたい本です。消費税込みで819円です。

これが、森乃石松さんの「期待すること」に対するご返事になるかもしれません。

2009年11月29日

医療

京都南部医療シンポ

11月28日(土)は、病院機能評価とともに、午後は「京都南部の医療を考えるシンポジウム」にシンポジストとして参加しました。

主催者から、京都南部は医療崩壊していると言われる京都府北部と同様の医師不足であることが強調されました。確かに京都府政情報誌である「京都NOW」で強調されているように、京都府の医師数は人口あたりで言えば日本一です。しかし京都市・乙訓医療圏に集中しているため、南部の2つの医療圏(山城北と山城南)を含む他の5つの医療圏では、すべて全国平均以下の医師しかいません。

社会保障推進協議会事務局次長の高松英祥氏は「医師不足は北部だけじゃない、南部も」、宇治徳州会病院末吉 敦副院長は「救急医療が崩壊していない地域での救急の現状と病院が抱える問題点」、私は「日本・京都府の医療と今後の課題--特に南部地域に注目して」というテーマで報告しました。

それに対して150人が参加した開場からは、たくさんの現状報告や質問が出されました。シンポジストの報告や質問の詳細は別の機会に述べるとして、興味深かったのは、末吉副院長の質疑を受けての発言でした。

「アメリカフロリダの救命センターでは、外傷患者に対して行政も救急隊も公的病院も私立病院もみんなが参加して、どのようにして地域の交通事故やケガでなくなる人を防げるかということを、立場をこえて議論している」
「休日救病診療所は診療所なので検査が制限される。福岡で始まっているが、検査ができる病院へ開業医の先生が来て一緒に外来をすればもっとスムーズになる。立場をこえて協力するような議論を行政が主導してもらいたい」

全く同感です。そもそも日本の医療は、診療所は圧倒的に開業医が担い、病院も8割が民間病院です。末吉副院長の宇治徳州会病院も私も民間病院ですが、それでも公的な仕事をしているという自負があります。公立も私立も住民も・・・、みんながいっしょに立場をこえて共同する。それが「医療崩壊」を「医療再生」へ変えていく力になる。そのことを実感したシンポジウムでした。
2009年11月28日

医療

「病院機能評価」が終わりました

11月26日に始まった「病院機能評価」も本日3日間の日程を終えました。
昨日は、合同面接と部署訪問を行う大切な日でした。穏やかでユーモラスな方々が多く、リラックスした雰囲気で午前中の合同面接は行われましたが、午後からの部署訪問(各病棟や検査室、薬局などの部署を訪問しチェックをする)では、サーベイヤー(審査員=1人のリーダー、2人の医師、2人の看護師、2人の事務職員)から結構厳しい指摘が続きました。

午後6時から、各部署で指摘されたことを情報交換し、どうするか対応方法を検討しました。翌日まで続く「試験」ですので、その日までに「改善」してしまえば、何とか「合格」できます。と書くと、簡単なように思えるでしょうが、付け刃でできないことも多く、結構みんなで悩みました。

本日は午前8時15分に集まり、改善したことをあらためて確認しましたが、何と10数項目もありました。これらは明日以降も続けなければならないことになります。9時からサーベイヤーによる最終日のチェックが行われ、昼過ぎに3日間の機能評価が終わりました。

私自身は5年前に初めて受審したときほどの緊張感はありませんでしたが、職員は大変な思いをして準備し、やりきった再受審でした。前回のように「一発合格」できるかどうかは分かりませんが、落とすための「試験」ではなく「改善支援」ですから、改善を積み重ねればいずれは「合格」できます。むしろこの間積み上げてきたプロセスを大切にしたいと思います。

お互いにご苦労さまでした。
2009年11月26日

医療

「病院機能評価」が始まりました

私の病院で、財団法人日本医療機能評価機構が行う「病院機能評価」が始まりました。今日から3日間の予定です。これは上記機構のホームページによると、「医療機関の第三者評価を行い、医療機関が質の高い医療サービスを提供していくための支援を行うことを目的」とするものです。2009年11月現在で、日本の8766病院中、2570病院が認定されています。

数100項目にわたるチェックリストがあり、書類審査、合同面接、部署訪問を行い、チェックするわけです。7人のサーベイヤー(審査員=1人のリーダー、2人の医師、2人の看護師、2人の事務職員)が来て行います。今日はサーベイヤーとの顔合わせと書類審査でした。チェックリストを見ていただくと分かりますが、微に入り細に入りかなり整備しなければならないことがあります。

私の病院では5年前に受審し認定(=合格)しましたが、5年ごとに更新が求められますので、今回は再受審というわけです。その時の結果も公開されておりネット上で見られます。

医療を取り巻く環境が大きく変わる時代ですので、チェック内容もドンドン進化し、5年前はver.4(第4版)だったのですが、今回はver.6(第6版)です。

「病院の改善支援」が目的とはいえ、受審する病院にとってみれば、「受験」なのです。医療費抑制政策が厳しくなるこの時代に、かなりのエネルギーを割いて準備しなければ「合格」しません。したがって職員への負担を考えると、あえて受審しない、という選択肢もあり、5年前の受審もずいぶん迷いました。しかし結果的にはこの受審を通してかなり病院の機構やシステムが整備されました。

「総医療費対GDP比をOECD加盟国平均まで今後引き上げていきます」とマニフェストに書いた民主党が政権についたのですが、総医療費を増やすためには国民の合意が必要です。「卵が先か鶏が先か」という問題になりますが、大変な時代であるからこそ、目に見える形で病院の改善を示すことが大切だと思います。

今日はゆっくり休んで、明日以降の合同面接、部署訪問に備えなければ・・・、と思いつつ、今日も遅くなってしまいました。
2009年11月 6日

医療

看護師支援

2009年10月30日

医療

デスカンファレンス

と書くと、デスカンファレンスって何? と言われそうです。

デス(death)=死亡、カンファレンス(conference)=協議会・検討会なので、死亡患者の検討会のことです。
私の病院では、亡くなられた方は毎週金曜日の夕方に、全員の経過が主治医から報告され、検討されることになっています。今日は対象者が4人でした。
私は他の用事があり、3人目まで参加しました。

3人は、それぞれ70歳代、80歳代、60歳代の方でした。
1人目の方は、肺炎は治癒したものの腎盂腎炎から敗血症になり死亡され、2人目の方は重症の肺気腫で呼吸不全により死亡されました。この2人は経過が長く全身状態がよくない状態が続いたので、DNAR指示がでていました。

DNAR (do not attempt resuscitation) は、狭義の終末期にある患者に対し、本人(または本人の意思が推定できる場合はその意思に基づき家族等)の希望で心肺停止時に心肺蘇生術を行わないことを指します。この指示は、担当医1人の判断にならないよう、私の病院では複数の医師と看護師の合意がないと出せない仕組みにしています。

もう1人は、原因がはっきりしない急激な病状変化で蘇生処置をしたものの亡くなられた方でした。この方を含めて2人の方の剖検(死体解剖)が行われました。最近は診断機器の進歩により死因が分からないことが少なくなってきたこと、家族の方の承諾が得にくくなっていることから、なかなか剖検をすることが少なくなってきただけに、1週間で2人の剖検は珍しいです。

カンファレンスでは、診断、治療方針が正しかったのか、DNARは正しい手順でとられていたのか、教訓とすべきことは何か、などいろいろと話がなされます。こうした話し合いが、明日以降の診療の中に活かされるわけです。大切なことなので、今はデスカンファレンスやDNARの仕組みを持っている病院が多くなっています。

何年たっても、こんな例は初めてだ、こんなこともあるのか、と思うことがしばしばあります。
集団の検討は極めて大切です。
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