週刊医学界新聞に載った「病院の世紀を超えて」は、猪飼周平氏の「病院の世紀の理論」をベースにした対談ですが、大いに共感をしました。対談の相手は松田晋哉氏。医療界ではDPC(Diagnosis Procedure Combination;診断群分類)の開発者として著名ですが、「利他的で社会民主主義的な社会が望ましい」とこの対談で述べているように、「社会民主主義者」を自称しています。一度講演を聞いたことがありますが、分かりやすく筋が通り同時に暖かみを感じさせる語り口は魅力的でした。
対談は、先進国で最も高齢化率が高くなった日本が世界のモデルになるには、地域をベースに健康不安のない成熟したコミュニティーの再構築が必要であることを見事に示しています。
以下、引用とコメント(→)です。
「あと10年もすれば,年間150万人が死亡する時代がやってくる」
「『診療所の延長線上としての在宅ケア』ではなく,「『入院医療の延長線上としての在宅ケア』を考えていかなければいけません」
→24時間365日の医療・介護体制が地域に必要です。
「trustのある社会」を思い描き、「自己責任ではなく社会連帯論に基づいた社会であり、構成員はおのおのが社会システムの維持に対して責任を負うべき」
「障害は確率的に出てくるものですから,個人の責任に帰するのではなく,社会全体で支えていくのを本来の原則とすべき」
「人々から自発的なエネルギーを調達するためには,理念が示されることは決定的に重要である」
「昨今の高齢者医療制度改革をめぐる議論などは,理念がほとんど語られていない点に不満を感じます」
→めざす社会の理念が示されていないことに多くの国民の不満、政治不信があるのだと思います。自己責任論でなく社会連帯、参加ができるように、権利としての社会保障を機能させることが大切です。
「医療者の労働環境が大変に厳しいことは心底理解できるのですが,ただ,もう一歩先の話,つまり『どういう社会をつくりたいのか』を医療界から発信していくべき・・・それは結局まちづくり」
「高齢者のニーズは医療だけではありません。まちづくり,コミュニティの基本デザインがあって,そのなかに医療も介護も位置付けられるべき」
→医療・介護はまちづくりのためにあるのです。
「生活と医療は常に混在している」
「診療報酬・介護報酬の支払いに柔軟性が必要・・・病院の空いた病床で生活している人がいたって別にいい」
「社会的入院も,高齢者にとっては合理的な選択・・・彼らを地域に戻すのであれば,地域のなかに代替機能を持たせなければなりません。コミュニティでケアするという視点が必要」
→「社会的入院」には必然性があることを日々実感します。解決のためには追い出しの「北風政策」ではなく地域で安心して暮らせる保障、「太陽政策」が必要です。
「急性期病院と在宅は将来の存在理由が明確・・・自治体病院を含む先端性の低い病院群から老健・特養などの介護施設に至る中間領域の施設群に対しては積極的な位置付けが与えられていない。・・・その中間領域にある重層的なニーズをどう評価していくか。全体として機能しているものを,個々の要素に分けてしまうと評価ができなくなる」
「医療と生活の『混在』はあったほうがよい」
「病院と地域ケアセンター,高齢者向けの住居が複合施設になっていてもいいわけですよね。それはアジア的なまちづくりです。欧州は機能で分けて物事をつくっていきますが,国民性としてアジア的な混在のほうが向いているのかもしれません」
→是非そんな制度をつくりたいし、私の病院もそんな病院にしたいと思います。
「『コミュニティの中心として特に重要な場所は何か』という質問項目があります。結果は学校が1位で,興味深いのは福祉・医療関連施設が2位だった」
「病院や施設がもっと地域にひらかれることが大切」
→
学校、福祉・医療関連施設は若い人たちが学び、働く場でもあり、地域に開かれることはとても重要です。
「地域の『支える力』をどう養うかという基本設計も同時に考えていく必要があります。しかし,町内会の組織率なんて年々下がっていく一方で,『支える』基礎体力はどんどん落ちているわけです。ヘルスケア関連職がそこで果たすべき役割は大きい」
「血縁や地縁が薄れていくなか,社会の単位としては小さなグループが地域のなかに重層的にあるほうが望ましい・・・同じ関心を持つ人による集団活動――金子勇先生(北大教授)のいう「関心縁」がキーワードになってくる。高齢者の場合はまさに"健康"が関心縁」
→医療・介護事業所が、新しいコミュニティの核になることは必要ですが、そのためには そのためにはもう少し余裕がほしい、というのが実感です。そんな社会をつくってこそ世界のモデルになれるでしょう。
「病院の世紀の理論」も是非読んでみたいと思います。うず高く積まれた本は増える一方ですが・・・。








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